出典:日本の歴史①日本史誕生・佐々木高明著・集英社刊
日本史誕生:24~25頁
第1章 日本列島の旧石器時代
1 旧石器文化の探求―縄文以前にさかのぼる
《日本旧石器文化の確認》
この試掘調査の成功の後、明治大学の考古学研究室が
中心になって一九四九(昭和二四)年の秋と翌年春に遺跡の正式な発掘調査が行われた。
その結果、ローム層の中に上下二枚の文化層のあることが確認された。
下層の岩宿Ⅰとよばれる文化層は二万四〇〇〇年前よりも古いとされ、
そこからは硬質頁岩製の楕円形石器(握斧あるいはハンドアックスともよばれる)や
削器(サイドスクレーパー)や縦長剥片などの旧石器が出土した。
また上層の岩宿Ⅱの文化層からは、
瑪瑙や黒曜石でつくられた切出型のナイフ形石器をはじめ、
尖頭器(ポイント)や削器など、比較的小型の旧石器類が出土した。
このようにして関東ロームの赤土層の中に旧石器時代の文化層が、
少なくとも二つあることが確認されたが、その文化層を旧石器時代のものとして、
当時の学界がすぐにみとめたわけではなかった。
はじめのころは「旧石器時代」という語を避けて
「先縄文時代」あるいは「無土器時代」など、
当たりさわりのない呼称が用いられていた。
だが、岩宿の発見を契機として、その後っぎつぎに旧石器時代の遺跡が発見され、
現在、その数は全国で三〇〇〇にもおよぶといわれている。
それに伴い、最近ではもう少し明確な
「先土器時代」あるいは「旧石器時代」という名称がひろく使われるようになってきた。
なかにはこの時代を「岩宿時代」とよぶ人も出てきている。
私は、モれらの用語の中で
「旧石器時代」「旧石器文化」という語を積極的に、
この本の中では用いることにしたい。
先土器時代というのは、土器に先立つ時代という意味で、
土器出現の直前の時期をさすならいいが、
数万年以上の長い時代を示す用語としてはふさわしくない。
これに対し、旧石器時代、旧石器文化という名称は一九世紀中ごろに
イギリス人のJ・ラボックにより提唱されて以来、
ヨーロッパでは約一万年以前の更新世の時代とモの文化をさす言葉として
すでに定着しており、
アフリカ、インド、東南アジア、中国、シべリアなどでもひろく用いられている。
「はじめに」の中でも述べたように、
私は日本文化の形成のプロセスをアジア諸地域の文化史の中K 位置づけて考えよらとしている。
したがって、東南アジアやインド、中国、シベリアなどと同様に、
日本列島においでも更新世の文化やその時代をやはり
旧石器文化」「旧石器時代」とよぶのが適当だと考えるのである。
「写真3」岩宿出土の旧石器 その1
握斧あるいはハンドアックス(9.5㎝)、
削器あるいはサイドスクレーパー(11.3㎝)
縦長剥片(10㎝)
いずれも重要文化財。明治大学考古学博物館
「写真4」 岩宿出土の旧石器 その2
掻器、削器、尖頭器あるいはポイント、ナイフ形石器(いずれも実物大)。
重要文化財。明治大学考古学厚物館。
《参考》
【世界史年表1】宇宙誕生から紀元前まで
『参考ブログ』
「歴史徒然」
「ウワイト(倭人)ウバイド」
「ネット歴史塾」
「古代史の画像」
「ヨハネの黙示録とノストラダムスの大予言」
「オリエント歴史回廊(遷都)」
「歴史学講座『創世』うらわ塾」
「終日歴史徒然雑記」
「古代史キーワード検索」
0 件のコメント:
コメントを投稿