2011年9月4日日曜日

日本史誕生のプロセスをさぐる

 出典:日本の歴史①日本史誕生・佐々木高明著・集英社
    日本史誕生:8~10頁
    はじめに
    『日本史誕生』を考える―現在と過去、アジアと日本―

 《日本史誕生のプロセスをさぐる

 「日本史誕生」。

 私は、この言葉に深い思いをこめて本書の書名にした。

 そこには、われわれ日本人のもつ文化がどのようにして生み出されてきたのか、

 つまり、日本文化の成立の過程を、

 できるだけわかりやすい形で明らかにしたいという思いが込められている。

 そのためには、われわれ日本人の歴史の原点を問いただし、

 その歴史が形成されてくるプロセスを正確に解き明かさねばならない。

 それは、日本列島を舞台に展開されてきた壮大な歴史のドラマの幕開きの部分を、

 つぶさに描き上げることにもなるのである。

 最近、

 「日本人とは何か」、

 「日本文化の特色はどのようにして形成されてきたのか」、

 このような問いかけをする人が少なくない。

 それは、国際化が大へんな勢いで進行し、

 世界のさまざまな人たちのさまざまな文化との接触の機会が

 多くなった現代的な状況の中で、

 われわれ自身が、そのアイデンティティを問い直されているからである。

 われわれは自らの由来を問いただし、そのルーツを求め、

 その歴史の軌跡を確かめることによって、

 自らのアイデンティティ、

 つまり世界の中の日本人、アジアの中の日本人の位置を確認しようとしている、

 ということができるようである。

 こうした現代的な問いかけにも答えることが、

 日本の歴史を体系的に、わかりやすく述べることを目標とした、

 この「集英社版日本の歴史」の目的の一つでもある。

 とくに、このシリーズの第一巻に当たる本書では、

 《日本文化の形成》や《日本人の成立》などをテーマに、

 上に述べたような問題の、もっとも基本的なところを、

 読者の方々と一緒に考えてゆきたいと思うのである。

 ところで、「日本史誕生」という書名をかかげ、

 日本列島における歴史のドラマの幕開きの部分をつぶさに描き上げようとすると、

 当然のことながら、文献史料などのまったくない古い時代にまで遡って考えねばならなくなる。

 そのためには遺跡や遺物の調査・研究にもとづいて先史文化の復元を行う考古学をはじめ、

 生物としてのヒトの特色を研究する自然人類学

 あるいは言語学や民俗学生態学や作物学など、

 さまざまな研究分野の最新の成果を総合的にとりあげ、

 わかりやすく説明してゆかねばならない。

 しかし、そうしたさまざまの研究分野の成果をとりあげ、

 比較検討を行って《日本文化の形成》や《日本人の成立》のプロセスなどを再構成するためには、

 それらの資料を解釈し、

 考察するための視点や方法を明確にしておくことが必要である。

 さもないと、資料を羅列しただけになり、筋道の通った歴史を再構成し、

 その謎を解く面白さがなくなってしまう。

 そのためには、

 私自身がもともと世界の諸民族の社会や文化の比較研究を行う

 民族学(文化人類学)を専門としているところから、

 まずアジアの諸民族の歴史や文化の中に位置づけて、

 「日本史誕生」のプロセス、

 より具体的には《日本文化の形成》や《日本人の成立》の問題を

 考えて見たいと思うのである。

 アジアをはじめ、世界各地の諸民族の生活誌(エスノグラフィー)の資料の中には、

 これらの問題を考察するに当たって参考になるものが少なくない。

 それらの資料をよく選択して拾いあげ、

 考古学や人類学などで得られた数多くの資料とつき合わせて比較検討を行い、

 「日本史誕生」のプロセスを、私はできるだけひろい視野から、

 本書の中で考えたいと思っている。

 そういう意味で本書は、民族学(文化人類学)を専門とする筆者が、

 考古学をはじめ、他のさまざまな学問分野の研究成果をとり入れながら、

 「日本史誕生」のプロセスを、

 できるだけ具体的に描こうとする試みだということができるのである。

 「写真」縄文土器

     青森県宮田遺跡出土

     青森県立郷土館風韻堂コレクション

  縄文文化は世界で稀にみる定着的で豊かな食料採集民の文化である。
  
  ここに示したのは彫刻を思わす華麗な磨消縄文で飾られた晩期の土器。

  縄文文化の心と形の豊かさをみごとに象徴するものである。

 「写真」漆塗り土器

     山形県押出遺跡出土

     山形県教育委員会

  は東アジアの照葉樹林文化を特徴づける文化要素の一つである。

  縄文時代の前期から驚くほど精巧な漆芸品が出土している。

  赤漆と黒漆に飾られたこの浅鉢も専門の技術者たちが製作したに違いない。

 『参考ブログ』

 「歴史徒然」
 「ウワイト(倭人)ウバイド」
 「ネット歴史塾」
 「古代史の画像」
 「ヨハネの黙示録とノストラダムスの大予言」
 「オリエント歴史回廊(遷都)」
 「歴史学講座『創世』うらわ塾」
 「終日歴史徒然雑記」
 「古代史キーワード検索」

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